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いなくなってしまった人

2017.03.05 (Sun)

昨年末、派遣社員の女性が会社を辞め、地方な実家に戻りました。
真面目にきちんとお仕事する方でしたが、辞めた理由ははっきりせず、その後、社内でも時々話題にでていました。

彼女は三十代、311で被災して、その時、「命はある日突然終わる。人生に何が起こるかわからない。だったら、やりたいことをやろう」と一念発起し、それまで勤めていた地元の会社を辞め、外国に語学留学しました。
しかしその後、地元ではそれを活かす仕事はなかったことから、ツテも知り合いもない東京に単身来て、派遣社員として外資系企業で仕事を始めたという経緯。
社内では、真面目にきちんとお仕事する人というのが、彼女の評価でした。

たまたま私と小さな個室でデスクを並べて仕事していた際、彼女がいろいろ悩んでいたことがわかりました。

せっかくはいった外資でも、英語を使うことがほとんどない。
本当はイギリスで働きたい。
もっと英語を使って仕事したい。
秘書として働きたい。
正社員になりたい。

派遣社員は年収ベースでは社員よりお給料は格段低いし、交通費も自費なので、地方から出てきて係累のないひとり暮らしの彼女にとっては、経済的にも厳しい状況というのもありました。
また、その会社では、彼女以外の派遣社員は全員すでに正社員になっていましたが、彼女だけは、派遣のままでした。
(これは、部署や上司によって違ってくるので、彼女のせいとかってわけではない)

秘書経験がまったくないので、すぐに外国人付の秘書として働くのは無理ですが、彼女の仕事をグループセクレタリーとしてレジメに書くのは問題なかったし、今いる会社で正社員になる可能性がないのなら、別の会社を探すことを考えるのは良いことで、もしかしたらもっと良い条件で働けるかもしれません。
なので、何も知らなかった彼女に、外資系企業に就職するためのいろいろな手段を教えてあげて、エージェントも紹介すると伝えました。
また、お世話になっているエージェントが私も同じだったので(私は彼女とは違う担当と契約)、そちらにも相談してみるといいよと話していました。

でも、彼女は、結局最後の最後まで、何もしませんでした。
何ひとつ、行動に移しませんでした。
もちろん、私のいうとおりにしなかったという意味ではなく、自分がやりたいと思うことに対して、何ひとつ行動にうつさなかったという意味です。

そして、何度も何度も言いました。
「どうして私ばっかり、損することになるんだろう」
「傷つきたくない」
「それでやってだめだったら、私、立ち直れない」
やってみなければわからないでしょう?という私に、彼女はいつも、過去、傷ついたり嫌な想いをしたことを例に出して、出来ない理由として語っていました。

外資系企業には、多種多様な人間がいます。
よって、日本企業にありがち(らしい)、「みんなとうまくやる」「みんなによく思ってもらう」というのは、仕事上では成立しない。
上司の指示は絶対で、その分、責任は彼らが負います。
しかし、彼女は最後までそれを理解できませんでした。
上司の指示で「これはやらないでください」と言われたものを、「でも、みんながやってほしいって言ってるし、やらないとあとで面倒が起こるから」と言ってやっていました。
私が、「やってはだめだよ。他の人に何か言われたら、『XXさんの指示です。何かあるなら彼に言ってください』と言えばいい。そうしないと、あなたは上司の指示とおりに動かない人になってしまう」とアドバイスしましたが、彼女は「でも、前の会社ではそういうふうにしないと、私にせいになったから」と言っていました。
当然ですが後で、彼女は上司に、「なぜやったのですか」と詰問されることになっていました。

今の会社にいる外国人たちは、はっきりいって質がそうとうに悪いです。
でも、彼女は企業で働く外国人は彼らしか知らない。
「相当に質が悪いよ。私が過去、いっしょに仕事した大量の外国人は、みな、職業人としてきちんとしていたし、人としてもものすごくきちんとした人が多かった」と伝えたところ、彼女は「そうなんだ・・・」と驚いていました。

派遣会社の担当者が、きちんと対応してくれないと、彼女はいつも言っていました。
たまたま何度か彼女の担当者とも話す機会がありましたが、私はそういう印象をもっていませんでした。
ただ、ビジネス上、契約上で無理なことは無理だし、派遣会社にいうべきことなのか、上司の相談するほうがいいことなのかの判断は、個人がするしかありません。
でも、彼女はどちらのことも信用していなかったし、相談することもしませんでした。
どちらも、はっきりものを言うし、彼女をなぐさめてはくれないし、彼女の気持ちを察して手をさしのべてくれることもない。
「どうせ、言ったってだめだから」と言って、何も言わずにいました。

彼女が辞める少し前に、正社員雇用の話が出たそうです。
彼女の上司からの話ではなく、私の上司から出された話でした。
私の上司(ゲーマーな人)は、「1年以上いたし、一生懸命真面目に働いていたんだから、もう正社員にしてあげてもいいと思う」と、上にかけあってヘッドカウントをとったそうです。
けれど、彼女はそれを「もう実家に帰ることにしたので」と言って断ったそうです。

彼女がいなくなった後、イケメン氏が彼女と親しかった私に、「なんで帰っちゃったんでしょう。もったいない。この会社で納得いかないんだったら、他の会社で仕事するのだって可能だったのに」と言っていました。
私の上司は、「彼女は、外資系で働くには、強さが足りなかった」と言っていました。
派遣会社のエージェントの人は、「きちんとした方でしたから、もっと英語を使いたいということでしたら、うちで他を紹介することもできたんですが、なぜ言ってくれなかったんでしょう?」と言っていました。

40代後半の女性リーダーが、私に言いました。
「こんなにがんばってるのにって、みんながんばってるよ。傷ついてもいるし、嫌な想いもしまくってる。でも、仕事するのに、そんなことかまっておられない。だって、仕事なんだから。努力してがんばっても、結果でない、評価されないことなんて、やまほどある。そんな個人のことを、いちいち察して手をさしのべてもらうこととか、優しくしてもらおうとか、そんなの、30超えた大人が期待してどーするの。彼女は結局、”女の子”だったんだよ。きちんと真面目に仕事していた自分を大事にできなかったんだ」

彼女とは、時々メールのやり取りしています。
傷つきたくない自分を相変わらず抱えています。
でも、会社とも、外資系での仕事とも、少し距離を置いたことで、当時のことを客観的に見れるようになったような感じです。
もっと出来ることがあった自分を、考えているようでした。

「また東京で働きたい」と言った彼女に、私は返事を書きました。
「東京を離れて半年は、まだこちらで仕事に復帰できる可能性はある。個人的な事情で、少し実家に帰りましたという理由が成立するから。でも、それ以上経ったら、もう外資系企業への復帰は困難になる。もし、またこちらにでてきて、外資系企業で働きたいというのなら、それを忘れないで」

彼女が地元に帰って3か月が経ちました。
彼女の後任には、アメリカで仕事をしていたという42歳の女性が正社員雇用で入社し、そつなく業務をこなしています。
もう、社内で彼女のことを話題にする人も、いなくなりました。

彼女は、地元でバイトを始めたそうです。
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10:13  |  近況  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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