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人間は複雑な生き物 ~手紙は憶えている

高級老人ホームで暮らすゼフは、妻のルースが亡くなった1週間後、同じホームでいる友人のマックスから手紙を渡されます。
ふたりは、アウシュビッツの生き残り。
手紙は、痴呆症が進行しつつあるゼフが行うべき復讐の旅を、彼が忘れないように克明に記されたものでした。

衝撃のラスト!と宣伝されていますが、私は途中で真実に気づきました。
大どんでん返しが目的の映画ではないので、同じように気づいた人はたくさんいるようです。
あえて隠してラストにすべてを集約する意図で作られた映画でもないので、そのあたりは宣伝はちょっと違うかと。

感想を書くには、どうしてもそのあたり、ネタバレせざるをえないので、ここからネタバレになります。



以下:

自分たちの家族を殺した、アウシュビッツのエリア長が、自分が殺したユダヤ人の名前を騙りアメリカに移住していることをつきとめたマックスは、車椅子から動けない自分のかわりに、その人物を探し当てて復讐することをゼフに頼みます。
ゼフとマックスは、同じアウシュビッツ、同じエリアの生き残りでした。

しかし、ゼフは進行しつつある痴呆症をわずらっており、記憶混濁、記憶喪失が常時あります。
よって彼は、マックスが用意してくれた手紙と彼がやってくれた手配に沿って、該当者らしき4人に会いに、バスを使って遠路旅することになります。

見ている我々は、ゼフが善良で優しい、妻を愛する老人であることを知ります。
しかし、そのゼフが、実は、彼が探していたナチ本人だったことがラスト、わかります。
そしてゼフ本人が、「覚えている」と言っています。
すべてが、マックスが仕組んだ復讐だったというのがわかることで、映画は終わる。

映画は終わるんですが、それを見ていた私たちには、大きな疑問がいくつも残されます。
ゼフはいったい、どこからどこまでを覚えていて、憶えていたうえで旅をしていたのか?
それとも、あの時衝動的に思い出したのか?

二人目に会った時、ゼフが「I am sorry 」と言ってその人にしがみつき、そして号泣します。
それは、刷り込まれた擬似記憶によるものなのか、それとも、自身が死においやろうとした人への贖罪だったのか?

本来、クリスチャンであるゼフが、自分が大量虐殺に加担したユダヤ人になりすまし、ユダヤ教信徒としてアメリカで生きていたという事実(映画冒頭でそれが描かれている)、恐らく妻もユダヤ人だったであろうことを考えると、宗教的にも偽りの人生を送るまでのかなり悪質な人間であったことがわかる時点で、それまでの善良で良き人だったゼフが、一瞬にして消滅する瞬間。。。じゃあ、彼という人間は、いったいどういう人物だったんだろう?という疑惑がどっとわきあがってくる。

腕の数字の刺青すらも、ともに逃亡した仲間と彫りあったというゼフ。
それらを忘れようとしていたのか、それとも、うまくごまかしていただけなのか、わかりません。
マックスが用意した旅を、どこまで理解していたのかもわからない。

しかし、ゼフがそれまで見せていた善良さを否定したならば、あれほどに妻を愛していたことや、二人目の候補者に見せた涙、子供たちに優しく接していたり、人々に丁寧に応じていた彼は、偽りの姿だったのか?という疑問も同時にわきあがってきます。

4人目、ゼフとともに身分を偽ってアメリカに逃げてきたナチの同胞は、「いつか君がくると思っていた」と言い、最後の覚悟を見せていました。
その人が語った「偽りの人生を送ることへのつらさ」を、ゼフ自身も味わっていたか、それは結局わからないままです。

最後。

それまで、自分たちはアウシュビッツの生き残りの家系であり、ユダヤ人だと思っていたふたりの家族、あの瞬間、自分たちはアウシュビッツでユダヤ人を大量虐殺したナチの家系ということがわかってしまった。
それは、自身の存在を根底からひっくり返す、とんでもない真実です。
宗教的にも、人種的にも、まったく違ううえに、被害者だったはずの立場が、いきなり加害者の立場に立たされる。

あの後、彼らはどうしたのだろうか・・・という気持ちだけが残る映画でした。

この映画、「サウルの息子」と並べる人がいますが、衝撃の度合いは、「サウルの息子」のほうが圧倒的に高いです。

ネット上でいろいろ感想読んだ中に、この映画を「ラノベ(タイトル記載あったが)の盗作!!!汚らしいじーさんばっかり出ているだけの映画」と評している人がいました。
まー、いろいろな見方があっていいと思うけど、さすがにこれは、呆れましたわ。
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