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ピクチャーブライドたちの運命 ~屋根裏の仏さま



“私たち”は、アメリカから送られてきた写真の男性のところに嫁ぎます。
長い船旅を経て到着したアメリカで、“私たち”を待っていたのは、若くて成功したハンサムな日本人男性たちではなく、休みなく働いてぎりぎりの生活をなんとか維持しているような、疲れ果てた男たちでした。
言葉も出来ない“私たち”は、日本に帰ることもできず、無理やり犯されるようにして子供を産み、そして夫と同じように疲れ果てていきます。
それでも築いたささやかな生活を、今度は戦火が襲う。

実際にいたピクチャーブライドたちを丹念に取材し、調査して、それを小説にしたのがこの「屋根裏の仏さま」です。
不特定大多数の日本女性たちは、“私たち”という形でおのが人生、そして仲間たちの人生を語る形式の文章で、まるで流れる詩のように物語は進行していきます。

“私たち”として語られることで、読んでいる我々は、単一個人の経験談としてではなく、総括的な体験として物語を見ることになり、結果、それぞれの糸が織り込まれてひとつの大きな素晴らしい絵のようになったタペストリーを見るような感覚になります。

淡々と語られる多くの女性の人生のほとんどが悲惨なものですが、後半、その中で穏やかな日々を作り上げることが出来た日本人たちの日常が、あっという間に崩壊します。
いづこかへ連れ去れた彼女たちのその後を語るのは、残された白人女性の“私たち”で、その声はいつの間にか遠くなっていくラスト。

大戦勃発によって、すべての日本人が収容所に送られた事実は知られていますが、それぞれの人々がどんな想いをもって、あるいはどんな状況で、すべてを捨てる結果になったのか、この本では淡々と語られています。

初めて触れた形式の小説です。
小説の表現が多くの可能性と広がりをまだまだもっていることを、この小説は示しているように思いました。
余韻が素晴らしく、読後、すべての人々が舞台から去った後、何もないその場所に風だけが残った・・・みたいな感覚になりました。
訳もとてもよくて、何度も何度も読み返したい本です。

最近、翻訳本がとても読みたくて、いろいろ買って読んでいます。
翻訳本のほとんどがハードカバーで、値段もそれなりにするのが、けっこう大変なところ。
でも、本当に良い本が多く、もっともっと読みたいと思う今日この頃です。

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