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それは確かに夫婦の愛だった ~リリーのすべて



世界で最初に性適合手術を受けた人の実話をベースに作られた映画です。

風景画家として成功をおさめていたアイナーは、同じく画家の妻ゲルダを深く愛していました。
ある時、悪戯心から女装してパーティに出たアイナーは、そのままゲルダの絵のモデルになります。
そしてその絵は、世間から大きく注目を浴びるようになりますが、その時を堺に、アイナーは大きく変化します。

アイナーはゲルダとの間に普通の夫婦生活があり、それまで普通に男性として生活していました。
しかし物語が進むにつれ、実は子供の頃から自分が男性であるという事に違和感を感じて生きてきたことがわかります。
それが女装したことで、抑えていたものが決壊し、戻れない道をたどることになる。

女性としていきたいと願う夫に対し、当初妻はそれを否定しますが、彼の苦悩と真実に対して、真摯に向き合っていくことになります。
彼女の夫への愛は深く、そして誠実でした。
けれどそれは同時に、“アイナー”という、彼女が深く愛した男を失う道でもあります。

だいぶ前に、テレビのドキュメンタリーで、この内容と同じ番組を見たことがありました。
日本人のごく普通の夫婦で、娘もおり、教職につくふたりは円満な夫婦生活を送っていたそうですが、ある時夫から、「自分は性一障害、女性として生きたい」と告白されたそうです。
テレビカメラには、すでに女性となりつつある夫が映し出されており、妻はそれを真摯にサポートしていました。

だがしかし、ひとりでカメラに向かった時、彼女は夫の名前を呼びながら、「XX君を返してほしい」と号泣。
まだ小学生の娘は、女性となっていく父親の姿に困惑しつつ、それを否定する言葉はありませんでした。
家族の絆は確実なものであっても、そこにかつていた父親、夫の姿はもうありませんでした。
ひとりの人間としての幸福の在り方としては正しい形ではあっても、どうしようもない悲劇がそこには確実にありました。

「リリーのすべて」の中でも、妻ゲルダが同じことを叫んでいます。

「アイナーに会いたい」
「アイナーに抱きしめてほしい」

リリーはそんなゲルダに言います。
「アイナーはもういない」

かつて心の底からゲルダを愛したアイナーが、リリーとなって、ゲルダへの愛が失われたのかといえば、決してそうではありません。
ゲルダへの愛も、信頼も、まったく変わっていないことがわかります。
けれど、リリーという女性になったかつてのアイナーには、ゲルダとの夫婦生活はイコール男であった自分を残すことであり、女性としての新たなる人生を作る障害にもなる。
そしてなにより、ゲルダの幸福にはつながりません。

これは、アイナー/リリーとゲルダというふたりの人間の、お互いへの深い愛情と信頼の物語でした。

アイナーは失われても、リリーはそこにいます。
それは、ゲルダが愛する“人”であることに変わりなく、そしてゲルダを愛する“人”であることに変わりはない。

そこにどれほどの痛みや悲しみ、苦悩があろうとも、決してお互いの手を離さなかったふたりの姿は、感動的でした。

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