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人としてどうあるべきか ~ブリッジオブスパイ



第二次大戦直後、ドイツが東西に分断され、米ソが冷戦に突入した頃の、実話に基づいた映画です。

ソ連のスパイとしてつかまったアベル。
アメリカ政府は、表面的に、あくまでも法的にアベルを裁くために、正当な形で裁判にかけるため、アベルの弁護人をジム・ドノヴァンに指名します。
ソ連への憎しみにあふれるアメリカの中で、ドノヴァンはプロとして、職務を遂行しようとしますが、多くの人が、「なぜ、敵を擁護するのか」と、ドノヴァンにも非難批判が集中し、攻撃されることになります。
そんな中、ソ連上空偵察にでた特別飛行機が撃墜され、パイロットのアメリカ人がソ連にスパイとして捕まり、東ドイツでは、巻き込まれたアメリカ人留学生が東ドイツで拉致監禁される事態が発生。
拉致されたアメリカ人と、アベルの身柄を交換するという条件の交渉のために、ドノヴァンは東ドイツへと向かいますが、交渉の相手はソ連KGBの大物、東ドイツの政府の意志を担った弁護士で、それぞれの国を背負った大きな交渉となっていきます。

骨太な、すごい映画でした。
本当に、これはすごい。

すべてのアメリカ人にとって、ソ連のスパイというのが敵でしかなかった時に、ドノヴァンはプロの弁護士として、職務に忠実に仕事に向かいます。
警官、裁判官、政府の人々ですら、スパイであるアベルが死をもってその“罪”をあがなうべきだと考える中、ドノヴァンはアベルをひとりの人間として、弁護にあたります。

ソ連のスパイであるアベルは、ソビエト連邦の国民として、職務を誠実にこなしてきた人物といえます。
故郷に妻子を残したまま、長い間、異国でスパイ活動をしており、捕まった後もいっさい機密をもらしていません。

このアベルがすごかったでした。
寡黙で、実直な人柄であるとともに、ひとりの人間として、尊敬に値する人物であることもわかります。
アベルも、職務に忠実なプロであったことにかわりはありません。
ドノヴァンが、「法廷で裁かれて、もしかしたら電気イスに送られるかもしれないが、不安ではないのか?」とたずねると、アベルは「不安になってどうなる?」と返します。
アベルの立場は、アメリカ国民には敵国のスパイとして、母国のソ連からは、敵国につかまり機密を漏らしたかもしれないスパイとして、どちらにおいても、唾棄されるべき存在となっています。

そのアベルの個人としての立場や権利、尊厳を、あくまでも弁護士として守ろうとするドノヴァンをトム・ハンクスが地味に演じていて、派手な演出がない分、心にしみるような映画となっていました。

脚本が見事で、さすが、コーエン兄弟!と思いましたが、もっとすごかったのは、アベルを演じた俳優。
調べたら、イギリスの俳優さんで、今回のゴールデングローブやアカデミーにも、助演男優賞でノミネートされていました。
表情をいっさい変えず、訥々と語るアベルの存在が、この映画の大きな柱にもなっていますが、そのアベルとドノヴァンの間に作られる、人としての信頼関係、互いに対する尊敬の念、そしてふたりが別れるシーンが、あまりにも素晴らしく、とくにクライマックスシーン、台詞も説明もなしで、静寂に包まれて、しかしすべてを語り尽くしたような場面に圧倒されました。
正直、震えるほどすごいシーンだった。

考えてみると、米ソの冷戦時代や、ベルリンの壁を知らないで育った人が増えてるんですよね。
見る人、見る世代によって、見かたが変わる映画かもしれないなぁとか、思ったりしました。

後でふと、そういえばアベルが笑顔を見せたシーンは一度もなかったことに気がつきました。
彼がアメリカですごした長い年月、どんな日々だったのだろうと、ふと思ったり。
本当の身分を知り、敵であるとわかっても、あくまでも彼をひとりの人間、ひとりのクライアントとして見ていたドノヴァンという人を、アベルがどう見て、どう感じたのか。
映画の中でそれを一瞬、アベルが語るシーンがあります。

私、そこで泣きました。

すごくいい映画です。
ぜひ、見てほしい。


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