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アニメとGAMEとマンガな日々
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人はみな何かを失って生きている~ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

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DVD購入しての再視聴。

オスカーはエクセントリックで神経質、扱いにくい子供で、ことごとく自分も他人も削っていくことしか出来ない、すべてに恐怖を感じる繊細な少年です。
911で崩壊したWTCの116Fにいた父親は、遺体も残っておらず、かわりに留守電に6回のメッセージが残されていました。
それは、オスカーに向けて残されたものでした。

父親の死は子供にとって、自分を守るものを失うことにつながります。
母親は、どんなにがんばっても、その代わりにはなりえません。
最大の理解者、最高の親友でもあった父親を失ったオスカーは、恐怖に満ちた世界に対峙することになります。
それと同時に彼は、父親の死に対する贖罪を背負っていました。

ワールドトレードセンターが崩壊した日は、私の誕生日です。
帰宅して深夜、テレビに映ったそれを、私は一生忘れることはできないでしょう。
次の日から、自分の周辺に起きた、911に関連する事態も、遠い日本でありながら、あまりにもリアルでした。

1年後、友人とふたりでNYに行きました。
初めてのNYでした。
駅を降りると、場所を知らない私たちにも、「あっちだ」とわかるような特別な空気がありました。
グラウンドゼロから、冷たい空気の帯が流れ来ていて、私たちの足に絡みつきました。
リアルに、現実的に、冷たい空気が流れていました。
1年たってもまだ、周辺には行方を捜す人々が残したメッセージや写真がたくさん貼られていて、殉職した消防士と警官の名前が掲げており、えぐれたようになったその地で、人々は遺体や遺品の回収作業をしていました。

父親の声が途切れた瞬間、テレビの画面に崩壊するタワーが映し出されるシーンは、衝撃的です。
10歳の、繊細な少年が体験するには、あまりにも悲惨なものでした。

オスカーが、父親が残したと思われる鍵が何につながるのかを求めて、400人以上の人々に会いに行く道程は、亡くなった彼の父親が生前、人間にも社会にも馴染むことができなかった息子のために提案した冒険につながっていました。
オスカーは父親の死によって、誰のサポートもなく、自らがおのれの恐怖に立ち向かい、見知らぬ人々とかかわりを持っていきます。

前にも書いていますが、オスカーは恐怖を克服するために、タンバリンを鳴らしています。
タンバリンをやたら鳴らしまくっている時、オスカーがその状況をどれほどに恐ろしく感じているか、それと過酷に戦っているかを示しています。
ブルックリン橋を渡る時、横断歩道を渡る時、誰かの家のベルを鳴らす時、オスカーはタンバリンを狂ったように鳴らす。
彼を助ける人が誰もいない世界で、オスカーはタンバリンを鳴らし続けます。

彼が訪ねた多くの“ブラック”さんたちが、実はオスカーを受け入れていたとわかるラスト。
それはなぜか。
それがわかった瞬間、オスカーの世界は開きます。
見ず知らずの妙な子供が突然訪ねてきて、「この鍵を知ってますか?」と唐突に聞いてくる。
それでも多くの人々は、彼を迎え入れてくれました。

見知らぬ人々、その一瞬だけの関わりの人でも、大きく人生を変えられることがあります。
それは、神からのサインでもあり、偶然とはいえない何かがあると、いつも感じます。

オスカーが訪ねた人々も、オスカーによって開いた扉があったことがわかる最後。
オスカーが深い、生々しい傷をさらしたのは、初めて会った鍵の本当の持ち主でした。
それは、オスカーが扉を開けた瞬間でもあります。

911で父親を亡くした子供はたくさんいます。
消防博物館には、911で亡くなった消防士たちの写真と、当時の現場の写真が展示されています。
そこに、フロリダから観光できたという夫婦に、案内をしていた引退した消防士が、「父親を亡くした子供たちに、我々全員が今、父親のかわりになっています」という話をしていました。

世界は決して優しくも、公平でもありません。
けれど、その世界で、笑顔を向けてくれる、黙って抱きしめてくれる人たちも確実に存在しています。
今、自分がもっている鍵は、自分が開けたい扉の鍵ではないかもしれません。
けれど、その鍵が、思わぬ何かにつながる扉を開けることになるかもしれない。

これは、そんな映画です。

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