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ナチの子供たちの『そして。。。』 ~さよならアドルフ



ネタばれありで、感想です。

本題は「ローレ」という主人公の少女の名前になっていますが、邦題は見事でした。
この映画のテーマ、がっつり抑えてます。

ひじょうに寡黙な映画でした。
余計な説明とか、いかにもな感情描写はいっさいなく、BGMもほとんどないという印象。

なので、彼女がナチSS部隊幹部の娘で、どうやら父親はユダヤ人強制収容所で人体実験に関わっていたというのは、一瞬見せる画像や文字(ここだけ字幕がつく)で「え?」っていう程度にわかる感じになってます。
この映画はそういう部分がとても多いので、じっくりしっかり見ていないと、見逃してしまう小さな部分が多い。

ヒトラーが自殺しドイツが敗退した後、ナチの兵士たちと彼らの家族、信奉者たちのその後についての話は、考えてみるとほとんど耳にしたことはないし、目にしたこともありません。

映画は、その残された家族、子供たちが祖母の家に行くまでの過酷な旅を描いています。

ローレたちの平穏な日常は、いきなり消滅します。
不安をかきたてるような、ある種異常な様子がローレの目を通して描かれ、そしてそれは銀食器を現金に変えるために外出した母が、強姦され、血まみれになって戻ることで、完全消滅を告げることになります。

幼い弟妹を連れて、遠い母の実家に向けて歩き出したローレが体験するのは、ナチに協力した人たちのむごたらしい最期、その人たちの狂気とエゴ、ナチの家族とわかって自分たちに向けられる怒りと憎しみ、そして守ってくれる人のいない恐怖と不安です。

それと同時に、14歳という多感な少女の目から、性の部分も描かれます。

母の股間にのばされる父の手。
あえぎながら、お互いをむさぼる男女。
輪姦されて、挙句に惨殺されたのが明らかにわかる女性の死体。
年配の漁師は、逃亡の助けを願うローレが差し出した高額の時計にケチをつけて、彼女の身体を無言で要求してきます。

そして、彼女たちをなぜか助けていっしょに旅することになる“トーマス”。
明らかな欲望をローレに抱きつつ、でも決して一線を越えようとはしない。
収容所ではなく、刑務所にいたという彼が、いとも簡単に人を殺し、ローレを守ったかと思えば、いきなり彼らを置き去りにして姿を消す。

弟がこっそり盗んでいた彼のパスポートが別人のものだとわかった時、それまでのローレを取り巻いていた世界は完全に崩壊し、そしてあらたに再生されます。

大好きな父親も、美しい母親も、かくまってくれた農家の人々も、彼女たちを守ってくれた『トーマス』も、すべては虚飾と嘘に満ちた世界のものでした。
そこに真実はなく、何も知らずにいたローレは、事実を知ることで、他人が作った世界から、自分で作った世界の住人へと変わっていきます。

それは、彼女たちを救ったのは『トーマス』と名乗る青年なのではなく、彼が持っていたパスポートの本人トーマスという、恐らくすでに死んでしまっているであろうユダヤ人だとわかったことで、完全なものとなります。

彼女はもう、誰かに与えられた世界の秩序で生きることはないでしょう。
それがわかるラストは、決して明るいものではありません。
しかし、それは暗い結末ではなく、決意に満ちた結末といえると思いました。


【蛇足】

色々、他で感想を読んでいたら、あそこまでセックス描写ひっぱっておいて主人公がヤラないなんて、そこでヤリまくり、ヤラれまくりだったらいい映画と評価した。。。というのがあって、びっくりしました。

未成年がセックスしまくり、強姦されまくりの映画を見たいのだったら、この映画はそういう映画ではないので、お勧めしません。



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2 Comments

矢野トール says..."Re: タイトルなし"
コメントありがとうございます。

トーマスが電車でいなくなったのは、身元を証明し、彼自身の逃亡の助けになっていたパスポートが紛失していたからで、電車の中で検閲が行われていたので、パスポートがなければ明らかに彼らは危険にさらされるのがわかったからです。
そのなくなったパスポートを、弟が実は盗んで持っていたって事でした。

彼女の世界の大人は、実はユダヤ人虐殺に賛同し加担し、その上で暮らしていた人でした。
皮肉なことに、彼女の父が殺していた、彼女たちの裕福な生活を支えていたユダヤ人大量虐殺の犠牲者によって、命を救われたことになる。

それまでにすべてがひっくりかえってしまったわけで、信じていたものが崩壊した彼女が今後どう生きていくか、とても興味があります。
いい映画でしたよね。

子供たちのお洋服もかわいくて、そんなところにも目がいってました。
2014.03.31 09:11 | URL | #- [edit]
a says...""
映画を見て、良くわからない部分があったのでいろいろ調べていたらこのブログに辿り着きました。
このブログの、ローレや彼女のきょうだい達は「トーマス」ではなく、亡くなったユダヤ人のトーマスによって助けられたという部分を読んでハッとしました。エンディングの彼女の表情や行動を見ると、吹っ切りたいというかいろいろな葛藤がうごめいているのがよくわかりました。他のサイトでなぜ邦題が「さよならアドルフ」なのかという意見があったのですが決別というのを考えるとしっくりきますね。

トーマスがなぜ列車で急にいなくなったのか、それだけがよく分からなかったのでまた時間があるときに映画を見直そうと思っています。芸術面が強いのでハッキリと心情が表されていなくてわかりにくいところもありましたが私もとてもいい映画だと思いました(*^^*)
2014.03.30 12:18 | URL | #F9PODvhQ [edit]

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