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仕事ではなく喜び ~ビル・カニンガム&NY



去年から公開を待っていた映画、見てきました。

ビル・カニンガムは84歳、50年、ファッションフォトグラファーとして活躍してきた人で、現在も現役。
パリコレ初期から撮影に参加しており、現在もニューヨークタイムスでファッションと社交界の写真をメインとしたコラムを担当。
ストリートファッションフォトの草分けな人です。

彼に撮影されることはとても名誉なことで、かつ、そのファッションとスタイルが認めらたと言われているほどで、影響力は計り知れません。

けれども彼は、著名人も有名人にもさほどに興味なく、テレビも映画も見ないので、そもタレントや俳優は知りません。
そもそも、「彼らの服は自前じゃない」と、まったく興味を示さない。
ビルが撮影するのは、自分で服を選んで買い、それを独自のスタイルで着こなしている普通の人たちです。

もともとストイックな人であるというのは聞いていましたが、ここまでとは思っていませんでした。

住んでいるのは、カーネギーホールの上の狭い狭いアパートメント。
料理はしないから台所はなし、トイレも風呂も、掃除しなければならないから面倒って、共同。
部屋は、フィルムを収蔵してる大量の棚と、折りたたみの簡易ベッドだけ。
服は、パリの清掃局員の制服20ドルを愛用、移動手段の自転車はもらいもの。
食べ物にはまったく興味なく、安くて簡単に食べられるものでいい。

誰もがうらやむようなパーティの招待も、「水もとらない」で撮影。
「ニューヨークタイムスの仕事だから、それに泥を塗るようなことはしない」と言って、パーティに出る前に、オフィスでデリ食べてました。

多くの著名なファッション写真家を生み出しているNYで、ビルは時に、その報酬を受け取らないという事をしてきています。

かつて自分が撮影した道行く人たちを、有名ファッション誌に嘲りの対象として掲載されたこと、お金のために仕事を強制された事などから、「自由が一番大事、金でそれを渡すことはしない」とはっきり言っています。

ビルは、相手がセレブレティだろうが、社交界の花形だろうが、まったく関係ありません。

その仕事にいっさい妥協なく、そのシビアでシニカルさで、敵を作ることがあっても、彼のスタイルはゆるぎなく、だからこそ多くの人々から支持を得て信頼されているのがわかりました。

パリで勲章を授与されたビル、その格好はいつもと変わらぬ青いジャケット。
そして彼は言います。

「これは仕事じゃない、喜びです」

一番印象に残ったのは、パリコレのランウェイを見ながら、うれしくてしょーがなくてそわそわドキドキしちゃってるビルの姿でした。
かわいすぎて、見てるこっちが幸せになった。

使っているカメラはフィルムカメラで、撮影方法も一発撮り。
しかもすごい早さです。

Tシャツ姿の若者、ヒップホップな黒人少年たち、独自のスタイルを持つゲイピープルと、ビルの被写体は、いわゆる『おしゃれな女性』だけではありません。
我々から見ると、「わけわかんない」ようなスタイリッシュな人たちもたくさん含まれています。

ものすごく感銘を受けました。

ここまで研ぎ澄ますことは、たぶん普通の人には出来ないけれど、何が大事なのか、本当に価値あるもの、意味あるものは何なのかというのを、私たちはもっと考えていく必要がある。

余計なものを身にまといすぎて、考えすぎて、そういうものに囚われることで、失ってしまっているものがたくさんあるんだなと、ビルを見ていて思いました。

「恋人がいたことはないのですか?」という質問に、ビルは笑いながら、「こんなの忙しいのに、そんな時間はないよ」と答えます。
「僕も人間だから、衝動はあるよ。でもそれはコントロールすればいい」とも答えていました。

ビルがその笑顔を消して言葉を失うのは、「宗教はあなたにとってどういう意味を持つのですか?」という質問です。
毎週日曜日、教会に行くというビル。
その質問に、明快な答えは出されませんでした。

ビルのストリートフォトは、日本でのそれとはまったく違います。

彼が日本に来ても、恐らく撮影したいと思うような人は、ほとんどいないでしょう。
それほどに日本のファッションは画一化してるし、面白みもありません。

逆に、NYは「ないわー、それ、ないわー」くらいのすごいファッションの人もけっこういます。
けれど、それらが許容されてるわけではなく、そういう独自のスタイルを貫く強い意志と、誰からも認められなくてもそれが自分なのだという確固たる決意が必要になります。

NYにはそういう生き方をしている人がたくさんいて、ビルもその中にひとりなんだなって思いました。

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