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終わらない物語 ~天と地の守り人

天と地の守り人〈第3部〉新ヨゴ皇国編 (新潮文庫)天と地の守り人〈第3部〉新ヨゴ皇国編 (新潮文庫)
(2011/05/28)
上橋 菜穂子

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「守り人」シリーズの最終巻になる「天と地の守り人」3冊、読み終わりました。

少年少女向けのジュブナイルとして発刊された物語ではありますが、正直、物語も描写も青少年向けになっているわけではなく、ひじょうに奥行きのある深い物語でした。

精霊の卵を身体に持ってしまった神の国とされる新ヨゴ国の皇子チャグムと、王である父から命を狙われることになった彼を連れて逃亡の旅に出ることとなったバルサの物語は、近隣諸国を巻き込んで政治謀略をはらみ、世界を揺るがす壮大なスケールの歴史物語へと発展しました。

チャグムは、本来なら神と並ぶ存在であるべき神聖な皇子でありながら、その身に精霊の卵を宿してしまったことによって、その神聖性を失います。
結果、王族の神聖性を疑うことのない父王に命を狙われることになりますが、結果、彼の持つその異端さが国を救い、人々を救うことになります。

バルサとの旅の終わりに、バルサと離れたくない、自由に生きたいと願った少年は、最終巻で自ら一国の皇子としての立場をもって運命に立ち向かい、乗り越え、かつてはそこから逃げたいと祈った王への道を歩くことになります。
そのチャグムが常に抱えていたのは、“異端”としての自身の存在でした。

チャグムは皇子に生まれながら、皇子として生きることは出来ず、かといって平民として生きることも出来ませんでした。
父親から疎まれ命を狙われ、バルサやタンダと生活することになっても、そこは安住の地にはならなかった。
精霊の卵を抱えた経験が、彼が人間であることすら危ぶむ状況にしています。
チャグムは、どこへいっても、誰のもとでも、異端であることを常につきつけられています。

そんな中、チャグムが決して道を誤らなかったのは、実母とバルサの存在があったからだと思います。
とくにバルサは、なんの関わりもなかったチャグムの命を助け、一時的にでも彼を育て、そして何をもってしても彼の命を常に守ろうとした存在です。
最終話で、チャグムとバルサは何度も互いの手をとります。
その関係は息子と母に似ていて、しかしそれを遙かに超えたもっと崇高な関わりと思いました。

考えてみれば。
バルサの養父も、命を狙われたバルサを助けて、自分の身も友も知己も、おのれの人生も犠牲にした人です。
医師の娘で何も知らない幼子だったバルサは、養父に鍛えられ、養父の苦悩と絶望を知り、おのれの立場と人生を考え、複雑な人生を生きてきました。
そのバルサが、奇しくもその養父と同じように命を狙われた子供を連れて旅をすることとなり、その子供がたくさんの国の危機を、人々の命を救うことになるという流れは、まさに“神に選ばれた人のさだめ”もの物語というものを感じさせます。

けれどこの「守り人」シリーズは、選ばれし者たちの都合よい、単純な話ではありません。

バルサは身を削りながら戦い、タンダは戦に借り出されて命を失いかけ、チャグムは何度も身内から殺されかけます。
彼らは常に、それが正しい方法なのかとおのれの問い、時に過ちを犯し、苦悩し、涙にくれます。

それぞれの国の人々、それぞれの物語を持つそれぞれの人々が、この物語の最後にどこにたどりついていくのかは、このシリーズを読んだ人にしか味わうことのできないものだと思います。
けっしてハッピーエンドとは言えない終わり方ではあります。
けれど、それぞれが“還るべき場所へかえる”という終わり方は、この物語にふさわしいと思いました。

個人的に、バルサとタンダの関わりがとても好きでした。

最終話のこの物語で、タンダは命を失いかけます。
そこへからくもたどりついたバルサが、タンダの命を救うためにある決断を下すのですが。
本来なら一番つらいはずのタンダが、決断したバルサの背中をさするシーン、あまりの感動に震えました。
ふたりの信頼関係、互いに相手を想う気持ち、お互いを理解しあう、託しあう絶対的な関係の究極の描写と想いました。

この物語を読めたことに、とても感謝しています。

きっかけはアニメでした。
DVDボックス購入しているので、最初からもう一度こちらも見てみようと思っています。
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1 Comments

イングワズ says...""
こんばんは。
古い記事にコメントすいません。

この記事を読んで、凄く“守り人”シリーズなるものが読みたくなりやっとこさ読み終わりました。

バルサとタンダの関係が本当に大好きです。記事に書かれていたバルサのある決断、そしてバルサの「とんでもない女」といわせた行動に惚れました。矢野さんが感動で震えたというのも頷けます。

守り人シリーズとの出会いをありがとうございます。
2012.05.08 20:19 | URL | #- [edit]

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