![]() | 遠すぎた星 老人と宇宙2 (ハヤカワ文庫 SF ス 17-2) (2008/06/25) ジョン・スコルジー 商品詳細を見る |
先に紹介していた「老人と宇宙」の2作目を読みました。
こちらは前作の主人公は出てこず、前作でキィパーソンだったジェーン・せーガンが再び登場。
主人公は別に、ジェレドというゴースト部隊の隊員となっています。
人類を裏切って、人肉を食す異星人の連盟に組みした男が残した記憶と意識の断片を使って、その男の行方を捜し、裏切りの意図を究明するために作られたクローンのジェレドは、セーガンの部隊に配属され、他の隊員たちと共に戦闘に赴きます。
彼は生まれながらに、“人類を裏切った男のクローン”であるということから、人々から警戒されることを前提として生きなければならず、けれどオリジナルとはまったく別の素直で率直で控えめな性質を持って、多くの人々と関わることになります。
ゴースト部隊は、兵士に生まれかわる前に自然死してしまった人が残したマテリアルをそのまま使い、意識を製造して作られる兵士で、生まれおちたその時から成人です。
生まれた時からナノマシンによる肉体操作に慣れており、ある部分で卓越した能力を発揮しますが、人生経験がなく、時間によってしか作られない精神面では当然普通の人間にはない未熟さや率直さがあり、それがなんともアンビバレンツな魅力をかもしだしています。
ジェレドという人の率直さ、素直さは多くの人の信頼や友情を得ることとなり、その強い心は結果として人類を救うことになるのですが、1年という短い彼の人生でそれをはぐくんだのは、彼と関わった人達によるものです。
それはジェレドのオリジナルだった人物とは相対するもので、人間ってどこでこのような違いを生んでしまうんだろうと、読んでいて考えさせられました。
捕虜となったララエィ族の科学者のカイエンや、ジェレドと最初に出会う真生人のクラウド、ジェレドが愛したサラなど、心に残る人達がたくさんいて、さらに、実際にオリジナルの人生を意識だけで体験したジェレドが「愛することができた」というオリジナルの実の娘など、ジェレドが短い人生の中でどれほどにそういう人達を愛し、感謝していたかは、彼の最後の選択ではっきりとわかります。
「老人と宇宙」はとても面白いスペースオペラでしたが、この「遠すぎた星」はなんというか、心に染みるお話しでした。
電車の中で読んでいて、思わず泣きそうになって本を閉じたほど。
最後にセーガンがジェレドのためにした選択は人間の尊厳に関わるもので、でも結果として、ジェレドはオリジナルとはまったく別の、“ジェレド”自身として多くの人の心に残る存在だったのだとはっきりわかるシーンでありました。
いやー、SF読むの久しぶりだったんだけど、この本は我が書棚に大事に保管の本決定です。
星のきれいな夜に、静かな部屋でもう一度読みたい。
追記:
そういえば、ジェレドの苗字はディラックです。
彼は文字通り、ディラックの海の沈んだんだなぁと、今ふっと思いました。
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